~する前に一覧><脱サラをする前に>*リンクフリー 無断転載禁止 2011年12月更新

禁煙をする前に(3)

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<禁煙をする前に 第 3 章 >

私は、このテキストを書いている時点で禁煙を開始して3ヶ月以上が過ぎています。もちろんこれまでの記 録を更新し続けているのですが、それを可能にしている要因は一つではありません。いろいろな要因が複 合的に絡まり合って成し遂げられている記録更新です。その要因を自分なりに検証しご紹介しようと思いま すが、それが正しいかどうかは「自分でもわからない」というのが正直な気持ちです。もしかすると、ほかの 人が見たら違う要因を挙げるかもしれません。前章で書きましたように、人間は「自分自身を正確に理解し ているとは限らない」からです。

実際に、自分でも「禁煙が続いている」のが不思議な部分もあります。特段 といって、今までと「違うことをやった」のではなく、同じことをやっているに過ぎません。今までと違うのは、 それが「続いている」ことだけです。

これまでに幾度も禁煙に失敗していますが、一応はそのたびに「禁煙ノウハウ本」(以下:禁煙本)を読んで います。ですから、失敗した数だけ「禁煙本」を読んでいることになります。失敗しているにもかかわらず、な ん度も禁煙本を読むのは、「もしかしたら、今度こそ成功するノウハウが書いてあるかも」という期待がある からです。なん度失敗しようとも、性懲りもなく新しい禁煙本を読むのは、期待に期待しているからにほかな りません。しかし、毎回「期待外れ」に終わっていましたが…。

「毎回」ということは、私はいつも新しい禁煙本を読んでいることになります。これは、つまり、それだけ禁 煙本が新しく出版されていることを意味します。また、そのことは禁煙に対する需要が高いことも示していま す。そうです。禁煙本はいつの時代も喫煙者から高い需要があるのです。

前章で、禁煙を考えるきっかけとなる出来事を幾つか書きましたが、そのきっかけの1つにこの「新しい禁 煙本との出遭い」もあります。たまたま、書店で見つけた「禁煙を勧める本」が偶然にも、私の琴線に触れ たとき、なんとなく「禁煙できそうな気分」になります。見方を変えるなら、それだけ禁煙本として「売るための 仕掛けが優れている」ことになりますが、悔しいことに出版者の思うツボにはまりそんな気分にさせられま す。ですが、実際はその本の通りにいかないのはこれまで書いてきたとおりです。

そこで、なん度も失敗しているにも拘わらず、性懲りもなく「禁煙が成功しそうな気分」になってしまう禁煙 本について書きたいと思います。

基本的に「禁煙本」には「精神面」に訴える内容が書いてあります。本来、禁煙に失敗する要因には「習 慣」と「中毒」の2つの要因がありますが、禁煙本はこの2つのうちの「習慣」の要因について矯正しようとす るものです。「習慣」を具体的に説明するなら、普段のなにげない行動や動作の中に喫煙という行為が織り 込まれていることです。その普段している行為ができないとき、人は寂寞感を感じます。いわゆる「口寂し い」とか「手持ちぶたさ」といった表現が的を得ているでしょう。禁煙本は、こうした「習慣」からくる喫煙渇望 感を矯正しようとするものです。
 
確かに、禁煙本を読んだだけで禁煙に成功している人もいるでしょう。しかし、先ほども書きましたように、 喫煙には「習慣」以外に「中毒」を要因とする渇望感もあります。専門的な表現を使うなら「依存症」と言わ れるものです。そして、最近になり、禁煙に失敗する要因としては「中毒」のほうが大きな割合を占めている ことが知られるようになってきました。
 
このようなことから「喫煙は病気」などとも言われています。また、禁煙が続かないのは「ニコチン依存症 によるもの」と解説されることも多くなっています。しかし、一昔前までは喫煙を「中毒」として捉える考えはあ まり認知されていませんでした。専門家の間では認知されていたかもしれませんが、一般的には「喫煙」と 「中毒」を結びつけて考える発想はありませんでした。

「喫煙」が「中毒」と結びつけて考えるようになってから、禁煙に対する考え方も変わってきています。つま り、禁煙が続かない理由として「意志の弱さ」や「根性のなさ」などを挙げることはなくなってきています。あく までも中毒ですから「禁断症状」の仕業ということになります。「禁断症状」ですから、麻薬中毒患者と大して 変わらないことになり、単に「精神面」に訴えるだけでは禁煙を続けることができないことが言われるように なりました。そして、中毒であるからには、中毒に適した対処の仕方があるはずです。
 
私は前章で「タバコは嗜好品である」と書きましたが、禁煙が続かない理由に「中毒」が挙げられるなら、 「嗜好品」とは言えなくなってしまいます。好き嫌いの判断でタバコを吸っているのではなく、禁断症状のた めに吸っているのなら間違っても「嗜好品」とは言えません。自分が気がつかない間に、タバコに心を絡め 取られているのですから。
 
喫煙を中毒と捉え、病気のひとつだとして医師に相談することを訴えているテレビコマーシャルもありま す。代表的なものは、俳優の舘ひろしさんが登場しているCMがありました。舘さんはヘビースモーカーとし て有名でしたので、舘さんの起用はインパクトがありました。舘さんの口から「禁煙は病院で」などと言われ ると説得力があります。しかし、医師の力に頼ってまで禁煙に成功することに抵抗感がある人もいるでしょ う。忙しいサラリーマンなら「病院に行く時間もない」ということもあります。そのような人は薬局などで販売さ れている禁煙補助剤を使うことになります。
 
禁煙補助剤はニコチンの量を少しずつ減らしてニコチン依存症から脱却しようというものです。ある禁煙 補助剤の説明書を読みますと、完全にニコチン依存から脱却できるのに2~3ヶ月かかるようです。少しず つですから、これくらいの期間は必要なのかもしれません。
 
医師の指導や禁煙補助剤に頼る方法に共通することは「ある程度の期間」が必要なことです。そして、そ のことは禁煙に兆戦する際の大きな問題点とつながっています。それは、「費用がかかる」ことです。期間 が長ければ長いほど費用が膨らむことになります。もし、100%の確率で禁煙に成功するのならどれほど費 用がかかろうと問題はありません。しかし、実際はそうではありません。多額の費用をかけながら禁煙に失 敗する人もいるのです。
 
このような現実を見るとき、やはりなんの力も借りずに、全く費用をかけずに禁煙に兆戦するのが正しい 禁煙への道です。みなさん、なん度失敗してもいいですから、なんとしても自力で禁煙に成功しましょう。現 在、私はそれを成し遂げいる最中ですが、本当に、自分でも不思議です。本当に、全く費用をかけずに禁 煙を継続できています。そこで、なぜ継続できているかを考えてみました。

最初に考えられる理由は、なんと言っても価格です。これまでにも値上げはありましたが、その値上げ幅 は20円から30円程度という僅かな金額でしかありませんでした。しかし、今回は約1.5倍です。これほどの値 上げはやはり衝撃的で、禁煙を決意させるのに充分な値上げ幅です。私は1日に約1箱吸っていましたか ら、今までは1日に300円、1ヶ月9,000円を浪費していたことになります。それが値上げにより1ヶ月に13,200 円の浪費になるのですから、大きな痛手です。その痛手が禁煙を続行させている要因となっている可能性 は充分にあります。
 
ですが、視点を変えるなら、今までより4,200円しか増えていないと捉えることもできます。今までも吸って いたのですから急に13,200円の出費が増えたわけではありません。あくまで増えたのはこれまでの出費分 との差額4,200円でしかなく、1日に換算すると僅か120円、缶コーヒー1本の金額です。つまり、缶コーヒーを 1本辛抱するなら、タバコを吸うときの快感を捨てる必要がないのです。そのように考えるなら、禁煙が続い ている要因として「価格」を挙げるのは今一つ説得力に欠けます。
 
強いて、価格にこだわるなら、将来の価格でしょうか。既に欧米ではタバコの価格は日本円に換算する と、1,000円を越えているそうです。世界的な流れから考えて、日本もそれほど遠くない時期に同程度まで値 上げされても不思議ではありません。ですから、私が将来の価格を見越して「禁煙が続いている」と理由付 けすることもできます。しかし、やはり今一つ説得力に欠けます。いつかは値上げされるにしても、その日に ちが確定していない状況では、私に禁煙を続行させるだけの根拠にはなり得ません。私の性格上、そうし た不確かな根拠で禁煙の意志を保ち続けるのは不可能です。
 
このようなことから鑑みますと、「価格が私に禁煙を継続させている」と考えるのは無理があります。では、 「価格が要因ではない」とすると次に考えられるのは健康面における要因です。人間はやはり、健康でいら れてこその人生です。自分の意思で自分の肉体を使って自分の思い通りの行動がとれてこそ生きている 意味がある、というものです。そうした健康のことを考えて「禁煙が続いている」可能性は大いにあります。
 
しかし、これまでにも禁煙のきっかけが健康であったことは幾度もありました。それでも、最後は頓挫して いました。「健康を保つため」という理由であっても禁煙を続けることはできなかったのです。そのときのい い訳はいつも同じでした。

「タバコを吸っていても健康で長生きしている人がいる」

この言葉は「禁煙をやめる」ときの私の強い後ろ盾となっていました。現在はどうかわかりませんが、一時期 の日本の最高齢の方は喫煙者でした。「タバコは健康を損なう」と一般に言われながら、最高齢の方が喫 煙者だったのです。この事実は「禁煙をやめる」のに充分ないい訳となりました。もちろん、今回の禁煙継続 中もこのいい訳が頭に浮かんできました。それでも今のところ、禁煙をやめていません。このことから考え ますと、禁煙が続いている理由に健康面を上げるのも無理があるように思います。
 
これまで書いてきましたことから、私が禁煙を続けられている理由は、価格でもなく健康でもないことがわ かります。それでは、私が禁煙に成功している理由はなんでしょう。

第 3 章 おわり

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