~する前に一覧><脱サラをする前に>    *リンクフリー 全頁無断転載禁止 2010年6月更新

就活をする前に(2)

はじめに  第1章  第2章  第3章  第4章

<2章>

 「やりたい仕事」が見つからない人が、企業を選択するときに参考にする項目は、普通に考えて「待遇」で す。具体的にいうなら、給与や賞与、または休日などです。女性でしたら、「男女間における差別の有無」と か「育児休暇の取得実績」なども考慮に入れるかもしれません。本来は、更に福利厚生という面も重要です が、学生さんの場合はあまりピンとこないのが実際のところではないでしょうか。それはともかく、待遇面で 企業を比較するなら、一般的に言って規模が大きい企業ほど充実しているのが普通です。たぶん、多くの 学生さんが大企業を望むのも、待遇などが充実していると考えるからでしょう。
 このように学生さんが「待遇」を重要視しますと、自ずと大企業の競争率が高くなります。その大企業が昨 今の経済環境の厳しさから採用を抑えていますから、なおさら競争率が高くなり、不採用の通知を受ける学 生さんが多くなります。それが現在の状況です。
 このような状況で、<1章>に書きました3つの心構えを思い出してください。学生さんが「待遇のいい企 業」を選択の基準に考えるなら、それは、心構えのひとつ「こだわらない」を忘れていることになります。
 「企業30年説」という言葉をご存知の方も多いでしょう。「企業は30年で衰退する、消滅する」という説で す。この説はほぼ正しい、と私は考えていますが、どんな大企業でも30年以上続けて繁栄することの難しさ を言い表しています。ですから、大企業だからと言って一生涯安泰でいられるとは限りません。先ほど、学 生さんは「大企業を希望する人が多い」と書きましたが、その理由の1つに「安泰」という理由も含まれてい るはずです。しかし、現在、繁栄して大企業であることは、今後は衰退に向かう可能性が高いことでもあり ます。ですから、大企業に執着するのが正しい判断とは限りません。極端に「待遇が悪い」のでなければ中 小企業でも全く問題がないように思います。今の大企業は30年以上前、中小企業であったことを思い出し てください。
 この章の冒頭で、「やりたい仕事」と書きました。学生さんが、この「やりたい仕事」と言った場合、ほとんど が業種・業界を指していると思います。例えば、「食品メーカーに行きたい」とか「通信関係に行きたい」、ま たは「広告業界に行きたい」という言い方です。このとき、その念頭にあるのは「その企業が行っている最も 知られている業務内容」だと思います。例えば、いつの時代も学生に人気のある広告業界ですと、CMを作 ったりする業務です。
 ですが、企業には様々な業務があります。つまり職種です。一般的に最も人数が多い営業職、それから 営業の後方支援である事務職、そのほかに人事や経理など企業の規模が大きくなるに従って細分化され ています。ですから、例えば「広告企業が希望」のとき、運良く採用されても「広告制作」とは全く関係ない 「営業」などの職種に就かざるを得ないこともあります。というよりは、そうしたケースがほとんどでしょう。こ のような現実の中で「やりたい仕事」として業種や業界を念頭に入れて考えるのはあまり意味がないことに なります。
 今から30年ほど前、学生時代の友人は、就職活動の際に流通業を希望し、希望通り大手一流企業に入 社しました。しかし、配属されたのは経理部でした。そして、以来二十数年間ずっと経理畑だけに勤務して いました。友人の本当の希望は「モノを販売する」仕事だったのにも拘らずです。
 しかも、運悪くその企業はバブル崩壊後業績が悪化し、転職を余儀なくされました。その際に、決め手に なったのは「経理の知識と能力」でした。転職先が見つからない同僚が多い中、友人は「経理のプロ」であ ったがゆえに転職に成功したのです。世の中、なにが幸いするかわかりません。
 この例からわかるように、学生さんが就活に際し、「企業の選択」を業種や業界に執着することはそれほ ど意味がありません。入社したあとにどこに配属されるかは全くわからないからです。そうであるからこそ、 業種・業界で考えるのはなく職種で考えるのも一つの方法です。ですが、なんども書いていますように、学 生さんは仕事の具体的な内容をわかっているものではありません。知識だけはあるかもしれませんが、そ れでは本当に知っていることにはなりません。仕事の本当の内容を知るには体験するしかありません。
 このように書いてしまいますと、益々、学生さんはなにを基準に企業を選択すればよいかわからなくなりそ うです。いったい学生さんはなにを基準にして考えればいいのでしょう。
 答えは、「自分自身」です。自分の信条や考え方、人生観に合っている企業を選べばよいのです。もう少 し、くだけた表現をするなら「自分の性格などに合っていそうな」と言ってもいいでしょう。なにしろ、学生さん はまだ仕事の具体的な内容をわからないのですから…。
 仮に、あなたが優しい性格の人なら「優しい企業」を選べばいいですし、あなたが自由を好む性格の人な ら「自由度が高い企業」を選べばいいですし、あなたが向上心が強くスケールの大きい性格の人なら「自分 のスキルを高められる企業」を選べばよいのです。このとき企業の規模は考慮に入れないほうがいいでし ょう。
 しかし、中小企業を見るとき、注意しなければならないことがあります。それは、独立系であるか、それと もどこか大きな企業の子会社系であるかです。一概には言えませんが、子会社系は親会社の意向に左右 されることが多く、幹部に親会社からの天下りが多いケースがあります。こうした企業で働くことは「意欲を 削がれる」場面が多々ありますので注意が必要です。どんなに頑張って働いても、業績を上げても部長ま でしか昇進しない企業では働く意欲も沸かないというものです。
 先に、「極端に待遇が悪い」と書きましたが、中小企業にはそういう企業もたまに見受けられるます。例え ば、サービス残業が「当たり前」であったり仕事上における経費を社員に押しつけたりする企業などです。
 悪質な企業になりますと、法律で決められた労働時間を無視し、サービス残業をするかどうかを昇進の判 断基準にする例もあります。もちろん、このような企業は選択候補の中に入れるべきではありません。中小 企業ではサービス残業をする場面もありますが、それは自分から進んで行う場合のみであり、決して強制さ れるものであってはなりません。しかし、こうした企業の内実は外からは中々わかるものではありせん。面 接の際に、純粋な気持ちで質問してみるのも1つの方法です。もし、そのときに面接官がなにかしら不愉快 な表情を見せたなら辞退するのが賢明です。仮に、入社できたとしても3年以内に「退職を考えるようにな る」可能性が高いと思ったほうがよいでしょう。
 世の中には一般に知られていない「優良企業」があります。そうした企業に出会うにはとにかく調べること しかありません。ネットで調べるのもいいでしょうし、各種セミナーに参加するのもいいでしょう。もちろん合 同説明会にも出かけるべきです。しかし、どれだけ調べても学生さんが調べるのですから限界があるのも 事実です。ですから、そこから先は運に任せるしかありません。ではここで、賢人デカルトの言葉を紹介しま しょう。

「就職は人生で最も重要な出来事である。だが、ほとんどが偶然で決まる」

 就職の難しさは遥か昔から言われていたようで、しかも偶然の占める割合がは高いのも変わらないようで す。実際、経営に関する本を読んでいますと、「今の自分の仕事が天職である」と思っている人たちの中に は「偶然が重なって」その職業に就いている例がたくさんあります。
 このように「偶然が占める」要素も大きい就職ですが、それでも出来るだけ自分でできる範囲で努力しよう と考えるのが普通です。逆に、「なにもしないでいる」ことはできないでしょう。もし、「なにもしないで」いられ る人がいたなら、その人はよほど鈍感かもしくは怠惰な人ですから、どちらにしても社会人には向いていな い資質の人です。
 普通は、「不安」が学生さんを「努力」に向かわせます。また、そうでないと、このテキストの一番の要であ る「後悔しない」という目標も達せられなくなります。いくら「偶然が占める要素もある」と言っても、なにもしな いではいられないのが就活中の学生さんです。
 さて、就活に奮闘する学生さんですが、その採用試験には3つの要因があります。「成績」と「筆記」、そし て一番重要な「面接」です。次章ではそれらについて考えていきます。


<第2章> おわり

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