~する前に一覧><脱サラをする前に>    *リンクフリー 全頁無断転載禁止 2010年6月更新

就活をする前に(3)

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<第3章>

 一般的に、採用試験の要因には「成績」と「筆記」、そして「面接」があります。稀に「有力なコネ」というケ ースもあるでしょうが、こうしたケースはあまり褒められない、あくまで特別な例ですので、除外しますとやは り前記の3項目です。
 1番目の成績は採用試験時にジタバタしてもどうすることもできないものです。まさか過去に戻ってやり直 すわけにもいきませんから、対策の施しようがありません。しかし、私がこれまでに見たり聞いたりした話で は、企業は「成績」についてはあまり重要視していないようです。たぶん、それがほとんどの企業での実状 ではないでしょうか。また、2番目の「筆記」も同様の扱いのようです。この2つの扱いは、あまりに非常識な 場合を除いて採用試験の結果に影響を与えることは少ないようです。やはり、最も重要視されるのは「面 接」試験です。
 1章で書きました「迷信や噂話」の事例は主に面接試験におけるものです。例えば、「一発芸をやったら合 格した」とか、「受ける話をしたら合格した」などと、そうした話を聞いた学生が「へぇー」と思うような武勇伝 が卒業生から後輩に言い伝えられてきました。こうした言い伝えは、現在でも続いているようで、いくら時代 が変わろうとも学生さんが興味を引かれるのは同じなようです。では、良い意味で私が印象に残っている話 を紹介しましょう。

 ある学生は役員面接まで進み、役員数人に囲まれていました。役員の一人が学生のエントリーシートを 見ながら質問しました。
「君は将棋が好きなようだが、どのくらい好きなのかね?」
「はい。暇な時間があればいつもやってます。」
 そこで違う役員が尋ねました。
「それでは、暇な時間がないときはどうしてるの?」
「はい。暇な時間がないときもやってます」
 役員一同大爆笑。

 この学生は、このように役員連の心を掴んで内定を獲得したそうです。この例は、迷信や噂話に類する 「悪い例」ではありませんが、こういった話がまことしやかに言い伝えられてきました。

 基本的に、雑誌などメディアに取り上げられるのは「特異なこと」です。よく言われるように「犬が人を噛ん でもニュースにならないが、人が犬を噛んだらニュースになる」と同じで、ごく稀な話題になりそうな例を取り 上げているにすぎません。しかし、学生さんの中には「特異なこと」を間に受けてしまい、同じようなことをす る学生もいるようです。もちろん、憤死に違いありません。どんなことでも二番煎じは魅力が半減するもので すが、採用試験では半減どころかマイナス評価にしかなりません。
 近年、採用側で問題になっているのが、学生の「マニュアル化された受け答え」です。学生が採用試験用 の対策を考えるあまり、多くの学生が就職支援企業などが提供する「問答集」などに頼ることが多くなり、質 問に対する答えが似通ったものになっているそうです。この「似通った」答えも二番煎じと同じですので、魅 力ある答えにはなりようがなく、内定獲得には遠い結果に終わります。
 一般的に、面接試験は1度で終わることは少なく、ほとんどの場合複数回行われます。少なくとも2回はあ るのが普通ですし、多い企業では4~5回も受ける必要があります。面接試験が多段階に及ぶ企業では、1 次2次と面接が進むにつれて、面接官は役職が上位の方、例えば最終面接では役員などがなります。やは り、役員まで上り詰めた方というのは「人を見る目」が培われていますので、最終判断を下すのには適任で す。そして、役員が面接官となることを可能にしているのは、その時点での人数が絞られているからです。
 このことは逆に考えますと、1次2次といった最初のほうの面接時は一般社員の方が面接官になっている ことを示しています。当然、人事部の方たちだけでは手が足りず、ほかの部署の人たちが借り出されてい るはずです。そして、そのほかの部署の方たちは「面接という行為」においては慣れていないことになりま す。俗な言い方をするなら「面接の素人」が学生さんを評価していることになります。
 最近では、採用する側である人事部の方がメディアで情報を発信する姿をよく見かけます。先日も、ある 大手企業の人事部長が新聞紙上で「面接官はみんな面接の素人である」と語っていました。面接試験を受 ける学生さんはその事実も頭の隅に入れておいたほうがよいでしょう。そうすることによって、少しは緊張が 和らぐのではないでしょうか。
 1次2次と面接試験を通過することによって、学生の皆さんも少しずつ慣れていくはずです。そして、それに つれて面接官の目も厳しくなります。先に紹介しましたいろいろな迷信や噂話、武勇伝は多くがこの段階に おけるものです。しかし、過去の「特異な例」を実行しても、これまでも書きましたように、成功する確率はと ても低いのが現実です。
 中には、今までにないオリジナルな「武勇伝」をあらかじめ考えておき、役員の前で披露する猛者もいるで しょう。しかし、それらにしても大概において「ありきたりな」ものにしか映りません。結局、「目立つ、印象に 残ること」を試みていても、今までに多くの学生を面接してきた役員連からしますと、既に「見聞きしている」 ことがほとんど、と考えてもいいでしょう。「目立つ、印象に残る」ための行為が「マイナス面での」ということ になりかねません。
 では、どのように面接に臨めばよいのでしょう…。
 答えはシンプルです。「自然に」が一番いいのです。例えば、就職試験に備えて短期間で勉強した知識が あったとしても、それらは所詮付け焼き刃ですから自分のものとはなっていません。そうした状態で、知識を 語っても薄っぺらな印象は拭い切れません。マイナス印象のほうが強いでしょう。

 ここで、就職をビジネスにしている企業について少しばかり触れておきます。
 就職をビジネスとしている企業を一般的には「就職支援企業」とか「就職情報企業」などと言います。これ らの企業は採用企業と学生さんの間に入って橋渡しをすることによって利益を得ています。収入をどこから 得ているかと言えば採用企業からです。学生さんは情報を無料で得られるわけですから金銭的損失を被る ことはありませんが、その情報の信頼性や中立性は常に意識していなければいけません。就職支援企業 の内実も、面接時における迷信や噂話同様に玉石混交です。資金をほとんど必要とせずに始められる業 界ですから様々な人や企業が参入しています。然るに、学生さんにとって価値のある有用な就職支援企業 もありますが、そうでない企業もあります。見極めることが大切です。
 そうした就職支援企業では、エントリーシートの書き方や自己アピールの方法などを教えます。ですが、そ うしたものが「マニュアル化されたもの」であることはこれまでに書いたとおりです。つまり、多くの学生さん が利用していることになります。個性のないエントリーシートや自己アピールが魅力のないものであるのは 疑いようもありません。
 就職支援企業では、面接時の対応についても指導していますが、中には表面的なことに終始している内 容もあります。あまりに就職支援企業に依存するのは控えましょう。あくまで大切なのは「いかにして自分を 自然に知ってもらううか」です。先に紹介しました、「将棋の受け答え」は「目立つことを狙ったものはなく」自 然に対応できた理想的な例です。
 では、次章では「自然に」アピールする方法について考えたいと思います。


<第3章> おわり

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