~する前に一覧><脱サラをする前に>    *リンクフリー 全頁無断転載禁止 2010年6月更新

就活をする前に(4)

はじめに  第1章  第2章  第3章  第4章

<第4章>

 「自然に」ということほど、難しいことはありません。人間は誰しも他人の前では自分を飾るのが普通で す。しかも、自分の人生の将来を決めるかもしれない就職試験の場ですからなおさらです。そこで、言葉を 変えてみますと「無理をせず」、「知ったかぶりをせず」が適切なように思います。
 3章で書きましたように、短期間で勉強した、「勉強した」と言うよりも「詰め込んだ」とも言えるべきもので すが、その程度の知識を面接官の前で披露するのは絶対に避けるべきです。
 面接試験を思い浮かべるとき、「知ったかぶり」をする場面は頻繁にあるものではありません。基本的に、 面接試験は面接官が学生さんの「人となり」を見抜こうとする場ですから、ほとんどの時間が「学生時代に やっていたこと」を質問することに費やされるでしょう。そのような面接試験ですから、「知ったかぶり」を披 露するという失敗をしでかしてしまうのは、多くが面接の最後の場面です。
 普通、面接試験の最後に面接官から次のような質問が発せられます。
「最後に、なにか質問はありませんか?」
 このときに、それまでの面接で「手応え」を感じられなかったとき、つい焦って「気の利いた質問をしなけれ ば」という思いが「知ったかぶり」失敗を誘います。反対のケースもあります。それまで「手応えを感じてい た」がために、調子に乗って駄目押しのつもりで「知ったかぶり」失敗を犯してしまうのです。せっかく、それ までうまくこなしていた面接がこの「知ったかぶり質問」ですべて台無しになってしまいます。くれぐれも「知っ たかぶり」は慎みましょう。
 3章で少し触れましたが、就職支援企業などでは、面接試験に臨む際、「自分アピール」する方法を指導し ます。
 例えば、サークルで代表などを務めていたなら「いろんな人の多種多様な意見をまとめ、団体をひとつの 方向に導いた経験」を前面に出すように言われるでしょう。また、接客のアルバイトの経験があるなら「人と の接し方を学んだ経験」を前面に出すように言われます。
 このように、前面に出すものがなにかしら明確にあるならそれらをアピールすればよいのですが、忘れて はいけないのは、これらの指導は全員にされていることです。つまり、「ありきたりなアピール」になっている 可能性です。この点は頭の隅に留めておきましょう。
 次に、そうした経験がなにもない学生さんについて考えます。前面に出すものがないのですからアピール のしようがありません。ですが、「アピールする経験」があったとしても面接官はそれを全て鵜呑みにしてい るわけではありません。そもそも「アピール経験」が真実かどうかはわかりません。面接官が見ているの は、アピールするときの話し方、伝え方、要点のまとめ方などです。このように書きますと、「言葉巧みに話 すのがうまい」学生が有利に思えますが、そうとも言いきれません。あまりに「流暢にアピールがうまい」学 生は、反対に口先だけの「軽い人間」と見られることさえあります。大切なのは、学生らしい真摯な態度で す。
 もうおわかりでしょう。学生らしい真摯な態度さえ面接官に伝えることができれば、それで成功なのです。 「アピールするもの」がなくとも「ありのままの自分」を伝えればよいのです。「無理をする」ことも「知ったかぶ りをする」ことも必要なく、本来の自分というものを伝えるほうが面接試験を突破する可能性は高くなりま す。
 もし、本来は社会人が知っていなければならない時事や経済、経営、仕事のことなどなにも知らないな ら、それを正直に伝えたほうが面接官に好印象を与えることができます。この「好印象を伝えること」が面接 試験の「肝」といってもよいでしょう。
 面接試験は人と人との出会いです。形式的には学生が企業から受ける「試験」であっても、別の意味では 「出会いの場」です。そして面接官も人間です。感情を持っている人間です。例えどれほど能力的な採点が 低かろうが、面接官が好印象を持ったなら、その学生さんを採用するでしょう。そもそも、学生さんはまだ社 会人として未熟であるのは当然なのですから、企業がこれから社会人になろうという学生さんに完璧な能力 など求めているはずがありません。
 学生さんにもいろいろな性格な人がいます。度胸のある人もいれば、気弱な人もいます。普通に考えるな ら「度胸のある人」のほうが有利であるのは間違いありません。「気弱な人」が面接時に緊張し本来の自分 を出せないことが多いのに対して、「度胸のある人」はいつもの自分の実力を出せるからです。「自然に」振 舞うことさえ、「気弱な人」より「度胸のある人」のほうができるでしょう。
 このように考えますと、「気弱な人」は全く内定を獲得できないように思えてしまいます。しかし、決してあき らめてはいけません。面接官の方々はわかっています。「気弱な人」の中にも企業にとって必要な人材がい ることを。大切なのは、「自分が一生懸命働く人である」と訴えることです。自分の人間的魅力を最大限に 発揮することです。
 先に書きました、新聞に登場していた人事部の部長も話していました。
「短時間でひとりの人間の全てを理解することは不可能である」
 プロ野球の世界を見渡してみますと、世界のイチロー選手はドラフトの下位で採用した選手であることは あまりに有名です。現在、ジャイアンツで活躍している松本選手はドラフトに選ばれることさえなく、その下の 育成選手の枠にようやっと拾われた選手です。野球の世界では、ひとりの選手の採用の可否については 長期間調査して決めています。それだけの期間調査をしてもプロ野球で成功するかどうかはわからないの です。ましてや1時間にも満たない面接だけで学生さんの実力を判定することは不可能です。
 就活中の学生の皆さん、仮に、内定が貰えなくとも全く落ち込む必要などありません。内定が貰えなかっ たのは、その面接官が単にあなたの魅力を見抜けなかっただけです。
 整理をしますと、面接試験で心がけることは「自然に」「自分が一生懸命働く人である」ことを訴えることで す。マニュアルで利用してもよいことは、基本的なことだけです。例えば、「礼儀正しくする」とか「言葉使いを 丁寧にする」とか常識的なことだけです。そこから先は、マニュアルに頼ることなく、そして付け焼き刃でない 「本当の自分」を訴えましょう。それが「面接官に好印象を与える」コツです。
 現在、就職氷河期に「超」がつくほど厳しい就職戦線ですから、内定を獲得するのも容易ではないはずで す。それでも、「あきらめず」に「落ち込まず」に「自分を失わず」に兆戦してください。仮に、挑戦に失敗して もなんら気にすることはありません。なにしろ、本当の勝負は社会に出てからですから…。
 それでは、皆さんの努力が報われることを願っています。


<第4章> おわり 最後までお読みくださいましてありがとうございました。

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