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~する前に一覧><脱サラをする前に>    *リンクフリー 全頁無断転載禁止 2018年9月更新

転職をする前に(1)

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<第1章>

 近年、新入社員の約3割が「3年以内に退職する」と注目を集めています。しかし、実はこの傾向は近年に限ったことではなく、20年ほど前から表れていました。にもかかわらず、近年になって注目を集めたのは、企業の社員に対する評価方法が成果主義に変化してきたことがきっかけだったように思います。「新入社員が3年以内に退職する」ことと「成果主義」に直接的には関連はありませんが、成果主義の導入により会社員の在籍期間にマスコミが注目したのがきっかけです。しかし、この成果主義も最近ではマイナス面を指摘されることが多くなり、各企業は見直しをはじめているようです。

 若い人が「3年以内に退職する」状況には、様々な理由がありますが、若い人の意識が変化してきたことは見逃せません。昔でしたら、「つべこべ言わずに、とにかく辛抱する」のが一般的な考え方でしたが、今の若い人の間ではそうした意識が薄れてきています。

 この意識の変化は、社会認識が変化したことと無縁ではありません。かつての終身雇用という社会通念が転換してきたからです。その原因は企業が「終身雇用制度」を維持できなくなったからにほかなりません。また、ここ数年は人手不足が常態化し、多くの企業が中途採用に力を入れていることも要因です。さらに、国家でさえ「労働の流動性」という名の元に転職を促している側面もあります。

 つまりは、企業や国家が「転職がふつうになる」ような社会にしむけていることになります。このような変化により少しずつ、若い人の考えも少しずつ変わってきているようです。こうした状況がここ20年間、転職を考える人が30%前後を維持している理由です。
 実は、平成22年の調査では「最初に就職した会社に一生務める」という意識が増えています。しかし、徐々に転職を考える人の割合が増えていき、現在(平成30年)ではまた30%に戻っています。つまるところ、社会人の一定の割合の人は常に転職を考えていることになりますが、転職に際して重要なことは転職が成功となることです。

 これまでに紹介してきた例は若い人の意識ですが、転職を考えるのは若い人に限ったことではありません。真の意味で、転職に適しているのは30才過ぎかもしれません。そのくらいの年齢になっていますと、大方の人は「仕事に対する認識」や「仕事に対する取組み方」も確立されています。そうした確かな仕事観がある中で転職を考えるときが最も理想的な転職ができるように思います。

 例えば、そのときに従事している仕事が自分に適しているか、または属している企業が自分に適しているか、などそれまでの企業人として、社会人としての経験に照らして考えるでしょう。それ以外にも、そのとき従事している仕事うんぬんというよりも、その仕事以上にやりたい仕事が見つかるかもしれません。その発見も、社会人として成長したうえでの発見です。

 このように30才過ぎての転職は、自分なりに納得できる転職ができる可能性が高いですが、実際 は30才過ぎての転職は躊躇するものです。理由は、自身を取り巻く環境が20代に比べて変化して いるからです。年齢的に結婚している可能性が高いですが、もしお子さんが生まれていたなら「家族 を養う」という使命も果たさなければなりません。お子さんがいないにしても、結婚していたなら奥さ んの意向も無視するわけにはいきません。30才過ぎての転職は、20代に比べて慎重にならざるを 得ないのが現実です。

 20代の転職は、30代に比べてしがらみが少ない分、簡単にできそうな気がします。しかし、転職を決断するときの背景はとても重要です。もし、転職の背景に本来の自分の考えや信条、信念とは別の要因が含まれていたなら、のちのち後悔することになります。せっかく勇気を出して転職をするのですから、実りのある転職にしたいものです。

 基本的に、私は転職を否定するものではありません。ほとんどの人にとって、新卒で入社した企業は、それほどこだわって決めたものではないはずです。もちろん幼少の頃から職業を考えていて、その目標に向かって強い意識と高邁な思想で就職を果たした人もいるでしょうが、そのような人は稀です。ほとんどの人は就職をする年齢になったことで自分に適していると考えた企業を選んだ結果です。

 しかし、学生の身分で考えたことですから、社会についてわからないまま、取りあえず決めたという人のほうが多いのではないでしょうか。仮に、学生時代に既に就きたい職業が決まっていたとしても、その結論は社会についてほとんど知らない中で考えた職業です。ですから、社会人になったあとに考えが変わることはしばしばあります。

 就きたい職業が決まっていなかった学生さんの中には、例えば、「教師を目指していたが、採用枠がなく急遽今の企業に就職した」という人もいるでしょう。また、「希望していた企業を落ちたので、仕方なく今の企業に決めた」という人もたくさんいるでしょう。多くの人がそのような経緯で最初の就職先を決めているのが実状です。ですから、新卒で入社した企業に満足、納得している人は少ないと思います。

 勤務している企業に満足、納得していない人が転職を考えるのは尤もな話です。それでも安易な転職は後悔することにつながります。先に書きましたように、私は「転職を否定するものではありません」が、転職を考えるように至った理由や背景は押さえておかなければならない、と考えます。

 もちろん、「今の職場が合わないから」などという短絡的な理由で転職するのは考えものです。しかも、勤めはじめて3ヶ月以内で「転職を考える」ことは出来るだけ避けたいものです。そもそも「3ヶ 月以内」で転職する人間をどこも採用しないでしょう。「我慢や辛抱が出来ない人」と判断されるのがオチです。そのような人間を「企業が採用するはずもない」のは誰でも想像がつきます。

 あまりの短期間での転職が、自身のビジネス上の経歴にマイナスな影響を与えるとはいえ、どうしても「耐えられない」というケースがあるのも事実です。ストレスのあまり精神的疾病を発症してしまっては働いている意味がなくなってしまいます。ましてや、仕事上の悩みで命を絶つことなど絶対に あってはなりません。人により仕事に対する考え方は様々です。ある人は「自己実現の場」と考えるかもしれませんし、またある人は仕事は「生活費を稼ぐための手段」と考えるかもしれません。しかし、どちらにしても「生きている」ことが前提ですから、仕事上の悩みで命を絶つのは本末転倒です。そんなに焦らなくとも、人間はいつかは生を終えなくてはならないのですから急ぐことはありません。

 私は、若い人が仕事上の苦悩で命を絶ったニュースに接するたびに重苦しい気持ちになります。ほかに選択肢は思いつかなかったのだろうか、と悲しい気持ちになります。昔に比べたなら転職はそれほど悲観的に捉えられていません。ですから「どうしても苦しい」なら転職は解決策の一つです。

 このような極端な例を除いて、一般の人は「今の状況を変えたい」という思いから転職を考えるようになります。そして「今の状況」が自身にとって満足できない状況であることは間違いありません。そのようなときこそ、自分を見つめなおしてみましょう。純にシンプルに「なにに対して」不満なのかじっくりと考えることが大切です。もし、一時の感情で転職を実行に移したなら、あとで後悔することになります。

 転職も新卒時の会社選択と同様に人生の大きな転機となります。転職によって仕事が楽しくなることもありますし、反対にそれまでよりも苦痛になることもあります。それほど重要な節目です。だからこそ、転職は慎重に考えに考えて実行に移さなければなりません。

1章 終わり  

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