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~する前に一覧><脱サラをする前に>    *リンクフリー 全頁無断転載禁止 2018年9月更新

転職をする前に(2)

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<第2章>

 若い人が転職を口にするとき、そしてその理由として会社の給料など「労働環境」を上げるとき、不安に感じることがあります。

 例えば、「給料が少ない」とか「労働時間が長い」とか、または「休日が少ない」といった理由は、転職理由としてあまり相応しくありません。なぜなら、それらの不満はどこの会社に行ってもさほど違いがないからです。私は今までに様々な業界のビジネスマンと知り合ってきましたが、それらの人の誰もが「今の職場は楽だ」とは思っていませんでした。ほとんどの人が「自分の職場はどこよりも大変だ」と語っていました。人間はもちろん多少は大げさに話す習性がありますが、それを割り引いても本心から発せられている言葉のように感じました。

 このように、誰もが「自分の職場は大変だ」と感じているのですから、どこの職場も労働環境は厳しいのが実際のところです。しかし、中には同業他社に比べて「労働環境」が恵まれている企業もあります。例えば、給料が同業他社に比べて極端に高い会社もないことはありません。しかし、そうしたケースは稀です。仮にそのような企業があったとしても、そのような企業は注意をしなければなりません。あまりに「極端に給料が高い」など労働環境が好条件の企業は、企業そのものが社会的に問題があるケースが多いからです。「労働環境が恵まれている」と言っても限度があります。

 いくら給料が良かろうと、社会的に問題のある企業では働くべきではありません。のちのち大きな トラブルに巻き込まれる可能性が高いですし、自身の経歴にマイナスとなり、その後の仕事人生の障害となります。せっかく働いて報酬を得るなら真っ当な仕事に就いて得るべきです。

 問題のある企業に一度入社してしまうと退職することもままならなくなることがあります。ワンマン社長がヤクザ紛いの言動で社員を怒鳴りつけている企業などはその典型と言えるでしょう。転職をする際は、転職先企業の実態を正確に調べることはとても重要です。

 業界によっては、転職を繰り返すほど給料が上がると言われる業界もあります。例えば、ホテル業界などはその典型です。ですが、その実は「転職を繰り返す」ことが理由ではなく、経験が多いことにより熟練が増しているからです。つまり、仕事の能力が高くなっていることが理由で、単に転職の回数とは関係ありません。

「労働環境」の次に転職を考えるきっかけとなる要因は「人間関係」です。昔の賢人は言いました。
「人間の悩みのほとんどは人間関係である」
 この言葉は至言です。賢人が昔の人であることから考えますと、古代から人間関係は人間を悩ませる要因だったことがわかります。時代は変わっても「人間は変わらない」という証です。
 いつの時代も反りの合わない人間はいます。そして、それが上司だったりすると最悪です。やはり、昔から言います。
「上司は選べない」
 サラリーマンでいるからには、上司を選ぶことはできません。そして、どんなに性格が合わない上司であろうと従順に仕えなければ会社員でいることはできません。反発などしていては、無能な部下と評価されるのが関の山です。

 運悪く「合わない上司」にめぐり合ってしまい、反目する関係が続いている会社員がいるとき、その会社員に対して、ある人は言うでしょう。
「自分が嫌っているから相手も嫌う」と。
 自己啓発の本にはポジティブな内容が少なくありませんが、そうした本では「嫌いな人間にも長所は必ずある」といった文章が綴られています。しかし、敢えて私は言います。

 … 性格が合わない人間を理解することは無理です!

 無理です、嫌いな人間の長所を見つけるのは。では、どうするか。無理に好きになる必要はありません。また、無理に長所を見つける必要もありません。できることは、そのまま受け入れることだけです。そのまま受けれて接するしかありません。土台、嫌いな人間を好きになることなど神様でもない限り不可能です。自己啓発本を書くような人たちは悟りを開いたような人たちでしょうから、「嫌いな人の長所」を見つけることはできるでしょう。しかし、凡人である私たちには無理な相談です。ですから「性格が合わない人間を理解する」必要はありません。

 だからと言って、無闇に反抗することも慎まなければいけません。反抗ばかりしていては、仕事がはかどらなくなってしまいます。下手をすると、閑職に追いやられることにもなりかねません。もっと下手をすると解雇されることさえあります。会社勤めをしていて一番避けなければならにのは「クビ」になることです。「クビ」になってしまっては給料という収入が途絶えてしまいます。

 先に書きました「そのまま受け入れて接する」とは、具体的には、「当たり障りのない関係」でいることです。仕事に支障をきたさない程度に仕事をセーブして働けばいいのです。その程度の仕事ぶ りでも問題はありません。会社員という身分は欠勤をせず働いていさえすれば給料は貰えます。そうした会社員の特権を思う存分に利用しましょう。

 人間関係に悩んだときは、無理をせず会社員生活を過ごせばよいのです。会社から支給される給料は「人間関係の煩わしさを受け入れること」が含まれている金額です。
 このとき、忘れてならないのは「無理をせず」ということです。いくら仕事をセーブし当たり障りのない会社員生活を送るにしても、先に書きましたような「精神的に疾病を発症する」ほど我慢・辛抱をするのは間違いです。あくまで「無理をせず」の範囲を越えないことが大切です。

 「当たり障りのない」会社員生活を送っていますと、当然、評価は芳しいものとはなりません。ときには左遷されることもあるでしょう。ですが、考えようによっては、左遷も悪いことではありません。それまでの悩ましい人間関係から解放されることでもあります。そしてもしかすると、左遷先の水が自分に合うかもしれません。実際、会社員としてのちに出世または成功している人の中には、左遷させられた経験のある人は少なからずいます。そうした人たちは全員、左遷先で活き活きと仕事をしていました。「左遷」という言葉からはマイナスの印象がありますが、大切なのは「自分が活き活きと働ける」かどうかです。決して働いている場所ではありません。

 会社員として逆風の中にあったとき、自分に順風が吹いてくるまでじっと我慢するのも会社員のひとつの生き方です。もしかしたなら、左遷先で「能力を認めてくれる、または能力を開花させてくれる、仕事人生の師となる」上司にめぐり合えるかもしれません。

 しかし、左遷先で仕事環境が好転するとは限りません。それまでと同じ状況が続く可能性もあります。ですが、好転する確率は転職して生じる確率とさほど変わらないはずです。転職を考える理由が、仕事の中身ではなく人間関係にあるのなら、仕事人生が好転する確率は転職よりも異動のほうが高いのは間違いありません。仕事を遂行するうえでのインフラが今までと変わらないのですから。

 これまで、上司との折り合いが悪いときは「当たり障りなく」仕事をすることを勧めました。そして、その結果「左遷」される可能性があることも書きました。しかし、この外にも上司との悩ましい関係から解放される機会があります。それは、部下ではなく上司の異動です。人事は会社の決定事項ですから、上司を選べません。ということは、合わない上司にめぐり合ったとしても、その上司が異動する可能性も高いことになります。つまり、「当たり障りがない」働きぶりであっても仕事さえしていれば、当人の異動ではなく上司の異動により自分の仕事環境が好転することもあります。「合わない上司」も必ずいつかは異動します。

 このように、合わない上司や馴染めない同僚と仕事人生を終生一緒に働くことはほとんどありません。もし、転職を考える理由が「人間関係にある」のなら、今一度考え直してみましょう。転職を考えるに相応しい本当のきっかけが見つかるまで…。

2章 終わり   

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